「手続きの流れがイメージできず、なかなか個人再生に踏み出せない…」
「個人再生をして、できるだけ早く借金問題を解決したい…」
財産を残しつつも借金の大幅減額ができる可能性のある個人再生。
この個人再生には、申し立てから返済開始まで約6か月かかります。
また、個人再生のデメリットといわれる「ブラックリスト状態」の期間は5~10年続きます。
しかし、なかなか手続きに踏み出せないと、環境が変わって個人再生ができなくなってしまう場合もあります。
個人再生に限らず、借金問題は早めに行動することが解決への近道です。
なかなか決断できない方は、専門家に相談してご自身の状況にあった解決方法を見つけるのも一つの手段でしょう。
このページでは
- 個人再生にかかる期間や手続きの流れ
- 個人再生をするメリットとデメリット
についてご紹介します。
個人再生の手続きの流れを理解しよう
個人再生を利用して賢く借金問題を解決するためには、手続きの流れと期間を把握しておくことが必要です。そこで、まずは個人再生の手続きの基本的な流れとその期間を説明します。
個人再生にかかる期間~申し立てから再生計画の認可が決定するまで~
東京地方裁判所では個人再生委員が選任される
個人再生の手続きの一般的な流れを説明します。
①弁護士への相談
②個人再生の申し立て
③手続きの開始決定
④再生計画案の作成
⑤再生計画の認可
実は、個人再生の手続きの流れは、各地方裁判所の運用によって少しずつ違いがあります。ここでは、東京地方裁判所を例に手続きを説明します。
個人再生の開始決定までは1ヶ月
①専門家への相談
個人再生を利用する場合、まずは弁護士や司法書士などの専門家に手続きを依頼することも一つの手段です。
すると、専門家は各債権者に対し、受任通知を送って債権調査をします。その間に、依頼者は申し立てに必要な書類や資料を集めます。
②個人再生の申し立て
そして、必要書類がそろったら申立書を作成し、裁判所に個人再生の申し立てをします。弁護士費用を分割で支払う場合は、支払いが完了してから申し立てをすることになります。申し立てがあると、東京地方裁判所では「※個人再生委員」を選任します。
※個人再生委員とは、個人再生手続にかかわり、手続きの進行について裁判官に対し意見を述べる、再生計画の認可を認めるべきかどうかの意見書を提出するなどの役割をする人のことです。
③手続きの開始決定
東京地方裁判所では、個人再生委員が選任されたら、債務者は個人再生委員に面談をしにいきます。面談をするタイミングは、個人再生の申し立てをした後、1週間~2週間くらいです。
また、申し立て後は、個人再生委員の報酬に充てるため、個人再生の依頼者は予納金の支払いを開始します。個人再生委員との面談の場で特に問題がなく、きちんと予納金の支払いができる人の場合には、個人再生手続の開始決定があります。ここまでの期間がだいたい1ヶ月程度です。
再生計画案の認可まではさらに5ヶ月
個人再生の手続きを開始する決定があると、裁判所から借入先の貸金業者に対して債権調査が行われます。債権調査が終わったら、弁護士は債権調査票を受け取って、もし内容に対して異議があればその申し立てをします。
④再生計画案の作成
問題がなければ、各債権者の債権届出書の内容に従って、再生計画案を作成します。
再生計画案を提出するまでの期間は、手続き開始が決定してから3ヶ月後くらいです。弁護士から再生計画案が提出されたら、裁判所がその内容をチェックして、特に問題がなければ債権者にそのコピーを送って意見を聞きます。
債権者からの意見聴取期間がだいたい1ヶ月~1ヶ月半程度です。
⑤再生計画の認可
再生計画案について貸金業者からの異議が出なければ、再生計画案が認可されます。再生計画案が認可されると、その5週間くらい後に再生計画案が確定します。
このように、個人再生を申し立ててから実際に減額した借金の支払いを開始するまでの全体の期間は、申し立てから6ヶ月くらいです。
ただし、個人再生にかかる期間は、依頼者の対応によってかなり異なってきます。依頼者が裁判所の指示にきちんと従わないケースなどでは、手続きにかかる期間が大幅に延びることもあるので注意が必要です。
東京地方裁判所で実施される「履行テスト」ってなに?
「履行テスト」とは
「履行テスト」とは、再生計画案の確定前に、本当に将来債権者への返済を続けていけるか確認するために予納金の支払いをしたり、積み立てをすることです。
個人再生では、借金を減額してもらうことはできるものの、手続き後に債権者への支払いが残ります。
この支払いを確実に継続出来ないと、手続きに失敗してしまいます。
そこで、本当に将来債権者に支払いができるのかどうか、手続き中に積み立てをさせて確認する必要があります。その方法が履行テストです。
履行テストは、手続き後の債権者への支払いの予行演習のような意味があります。
履行テストの支払い金額は、個人再生後に支払う予定となっている金額と同程度になります。
例えば、個人再生後月々3万円支払う予定の債務者の場合には、月々3万円の積み立てをします。履行テストは、個人再生の申立後、再生計画案が認可されるまでの期間続きます。
東京地方裁判所では個人再生委員が選任されるので、個人再生委員が指定する口座に毎月支払い、履行テストで債務者が支払った予納金は個人再生委員の報酬に充てられます。
履行テストの支払いができないと、手続きが進まない!
個人再生では、履行テストはとても重要な意味を持ちます。もし履行テストがきちんと行われない場合には、それ以上手続きを進めることができなくなります。
例えば、東京地方裁判所では、個人再生の申立後に予納金の支払いがなければ、手続きが開始されません。手続きの開始決定があった後も、予納金の支払いがないと、その時点で手続きが止まってしまいます。
履行テストどおりの支払いがまったくできなくなって、個人再生後の支払いが不可能と判断された場合には、個人再生事件が途中で終了して、手続きに失敗してしまうケースもあります。これについては、ほかの裁判所でも同じことです。
このように、個人再生においては、手続き後に開始する履行テストが非常に重要な意味合いを持ちます。もし履行テストがきちんと履行できないと、その分手続きがどんどん延びてしまうことにもなります。
個人再生をスムーズに進めて手続きを成功させたいなら、裁判所や弁護士の指示に従い、きっちり予納金や積み立ての履行をしていくことが必要です。
個人再生をすると、信用情報機関に事故情報が登録される
個人再生をすると、借金返済額が大幅に減額できるメリットがありますし、住宅ローンがあってもマイホームを守れるなどのよいイメージもあります。しかし、個人再生にはデメリットもあります。
そこで、以下では個人再生の大きなデメリットであるブラックリスト問題について解説します。
個人再生をすると5年~10年は「ブラックリスト」に載る
ブラックリスト状態とは
個人再生をすると、「ブラックリスト状態」になってしまうというデメリットがあります。
ブラックリストとは言っても、本当にそのようなリストがあるわけではありません。個人再生に限らず、過払い金請求以外の債務整理の手続きを利用すると、信用情報機関が保管している個人信用情報に事故情報が記録されてしまいます。
個人再生などの債務整理手続きを利用すると、その信用情報機関に事故情報というネガティブな情報が登録されてしまっているので、貸金業者や金融機関は審査に通さないのです。このことが原因で、債務整理をすると、その後ローンやクレジットカードを利用できなくなります。
ブラックリスト状態でできなくなること
ブラックリスト状態になると、
・住宅ローンや車のローン、教育ローンや事業資金の融資などを受けることができない
・消費者金融のキャッシングが利用できない
・クレジットカードを作れない
となります。
さらに、ブラックリスト状態になると、自分が借金できなくなるだけでは済みません。他者が借金をする場合に、連帯保証人などの保証人になることもできなくなります。
ブラックリスト状態の期間は?
個人再生をしてその状態になってしまったら、その後どのくらい続くのでしょうか?
ブラックリスト状態とは、信用情報機関に事故情報が登録されていることです。そのため、事故情報が消去されたら、ブラックリスト状態は解消されて、ローンやクレジットカードの審査に通りやすくなります。事故情報が消去されるまでの期間については、各信用情報機関によって取り扱いが異なります。
事故情報が消去されるまでの期間
JICC |
個人再生手続後5年間情報が登録される |
CIC |
通常借金の完済後5年間情報が登録される |
KSC |
手続き後10年程度事故情報が登録される |
このように、各信用情報期間によって、それぞれ事故情報が登録される期間は異なるものの、個人再生の場合、だいたい手続き後5年~10年はブラックリスト状態が継続すると考えるといいでしょう。
個人再生をして借金を減らすなら、弁護士事務所に相談を!
個人再生をすると、ブラックリスト状態になってしまうデメリットはあるものの、この問題はいろいろな方法で対処することができます。
例えば、
・家族名義で住宅ローンを申請する
・クレジットカードの家族カードを利用させてもらう
・デビットカードを利用する
といった方法もあります。
このように、個人再生のデメリットはある程度は避けられません。
個人再生を成功させて上手に借金を減額してもらうには、よい専門家に依頼することが重要なポイントになります。
個人再生を依頼できる専門家には、弁護士と司法書士がいます。
以下では、個人再生を弁護士か司法書士のどちらに依頼すべきかを説明します。
個人再生は専門家に依頼することも一つの方法
弁護士と司法書士は、代理権の範囲が異なる
弁護士と司法書士の違いについては、一般的にはあまり広く知られていませんが、実はこの両者には大きな違いがあります。
個人再生の手続きにおいても、弁護士と司法書士ではできることが異なります。
個人再生は、裁判所に申し立てをして手続きを進めていく債務整理です。そこで、個人再生を弁護士や司法書士に依頼する場合、これらの専門家には債務者の代理人として手続きを進めていく必要があります。
司法書士には書類作成の代理権しかありません。
つまり、司法書士は、個人再生の手続きの申し立てや手続きの進行全体についての代理権はないのです。司法書士ができることは、債務者の代わりに必要な書類を作成することだけです。申し立てや手続きの進行自体は、債務者自身が自分で進めていかないといけないのです。
この点、弁護士には個人再生の手続きにおいて、代理権があります。申し立ても手続き進行も、すべて代理して進めていくことができます。
裁判所も安心できるので、個人再生の手続きがスムーズに進みやすいです。
すべての司法書士が取り扱えるわけではない
また、すべての司法書士が債務整理事件を取り扱うことができるわけではありません。きちんと研修によって認定を受けた「認定司法書士」のみが、債務整理を行うことができるのです。
弁護士も司法書士も、費用は変わらない?
弁護士と司法書士を比較する場合、司法書士のほうが弁護士よりも個人再生の費用が安いのではないかと思われていることがよくあります。
しかし実際には、弁護士と司法書士の費用はさほど大きな違いがないことが多いです。
弁護士費用や司法書士費用は、各事務所が自由に設定しているので、個人再生などの債務整理にかかる費用は、弁護士や司法書士かという違いよりもむしろ各事務所による違いのほうが大きいです。
個人再生するなら法律の専門家に相談するのも選択肢の一つ
以上のように、借金問題を解決したいなら、弁護士や司法書士に依頼をして個人再生をすることが対処方法の一つになります。借金の返済が苦しくなって放置していると、状況がどんどん悪くなってしまうかもしれません。
なるほど。
最初の一歩を踏み出すことが、苦しかった借金問題を解決することにつながるのかもしれませんね!