借りたお金は返すのが道理です。
しかし、「返す必要はないのでは?」と悪い考えが浮かんだり、借金の返済に行き詰まって真剣に踏み倒しを考えたりする方もゼロではないでしょう。
「名字が変わればもしかして…」と想像をめぐらした経験が、もしかしたらあるかもしれません。
そもそも、借金を踏み倒して罪に問われることはないのでしょうか?
借金の踏み倒しが可能かどうか、あるいは借金を踏み倒すとどんなことが起こるかについて確認しておきましょう。
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2022.02.03 更新
借りたお金は返すのが道理です。
しかし、「返す必要はないのでは?」と悪い考えが浮かんだり、借金の返済に行き詰まって真剣に踏み倒しを考えたりする方もゼロではないでしょう。
「名字が変わればもしかして…」と想像をめぐらした経験が、もしかしたらあるかもしれません。
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借金の踏み倒しが可能かどうか、あるいは借金を踏み倒すとどんなことが起こるかについて確認しておきましょう。
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目次
「結婚などで姓(名字)が変われば、貸金業者には「別人」と認識されるのでは?」
それを利用して「改姓してから行方をくらませば借金を踏み倒すことができるのでは?」と思う方もいるかもしれませんね。
しかし金融機関などの債権者は、債務者が名字を変えても同一人物であるとすぐにわかってしまいます。その根拠のひとつが「戸籍法」です。
債権者には、戸籍法第10条第1項第1号にもとづき債務者の戸籍を確認する権利があります。
第十条の二 前条第一項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
※戸籍法より引用
つまり、債務者が改姓しても債権を持つ金融機関が債務者の戸籍を調べれば、すぐ同一人物だとわかってしまうのです。
別の根拠として、借金の情報が信用情報機関にすべて記録・共有されていることも挙げられます。
債権者となる金融機関(銀行、消費者金融、クレジットカード会社など)のほとんどは、国内に3つある信用情報機関に加盟しています。それにより、各金融機関が持つ顧客(債務者)の信用情報はすべて共有されています。
たとえばA社で借金を延滞したら、信用情報機関で金融事故情報(いわゆるブラックリスト)として記録され、すべての加盟金融機関がその情報を共有します。
もしA社が改姓を把握していれば、その情報も加盟している金融機関すべてが確認できます。
つまり、“ブラックリスト入り”の状態になった後で名字が変わっても、その事実を別の金融機関が把握している可能性は高いということです。
さらに、金融機関の情報収集力は以前よりも高くなっています。
かつては、債務者が名字を変えると金融機関がその所在を把握できなくなり、借金の踏み倒しが実現するケースもありました。
しかし近年ではテクノロジーの進化によって情報網が非常に発達し、顧客の個人情報も把握しやすくなっています。現在は、金融機関が改姓した顧客の所在を把握できないことが少なくなりました。
加えて、金融機関は貸倒れ(借金を回収できないこと)を防ぐため、改姓前の旧姓を含めた顧客の個人情報の変化を追跡しており、最新情報の把握に努めています。
そのようなことから、名字を変えて金融機関の追跡から逃れて借金を踏み倒すことはほぼ不可能だといえるでしょう。
次は、転居による踏み倒しが可能かどうかを確認しましょう。たとえば、結婚で名字が変わり、結婚相手のところやまったく別の土地に引っ越す場合などです。
名字を変えるとともに結婚相手のところに引っ越せば、名前と住所が分からなくなるので取り立てが困難にはなります。
ただ前項でも説明した通り、債権者は戸籍法にもとづいて債務者の戸籍を調べることが可能です。加えて、住民基本台帳法第12条の3第1項第1号にもとづき、債務者の住民票や戸籍の附票を取得する権利もあります。
第十二条の三 市町村長は、前二条の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、次に掲げる者から、住民票の写しで基礎証明事項(第七条第一号から第三号まで及び第六号から第八号までに掲げる事項をいう。以下この項及び第七項において同じ。)のみが表示されたもの又は住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者
※住民基本台帳法より引用
以上の通り、債権者は法律に則って債務者の住所変更を確認できるので、すぐわかってしまうと考えたほうがいいでしょう。
「それなら住民票を旧住所のままにして夜逃げすればいいのでは?」と思う方がいるかもしれません。
夜逃げをすれば、債権者が住所を突き止めることは難しくなります。
しかし、それで法的な返済義務が消えるわけではありません。もし債権者に居場所が知られればより厳しく借金返済を求められるようになり、裁判を起こされて財産を失う恐れもあります。
そうした未来を考慮に入れなくても、「転居先の住民サービスが受けられない」などのデメリットもあります。
ここまでお読みになった方の中には、「借金には時効があるから、時効後は借金が帳消しになるでしょう!」と思う方がいるかもしれません。
結論からいうと、借金には時効があり、最終の取引日から5~10年経つと、合法的に返済義務を免れることも可能です。
これを「(消滅)時効の援用」といいます。
「消滅時効の援用」とは、合法的に借金を踏み倒せる方法です。条件は2つあります。
これらの条件が成立すると借金は帳消しになります。返済の苦しみから解放されるメリットは大きいでしょう。
しかし現実としては金融機関(債権者)が黙って時効を待つわけがありません。
債務者による「消滅時効の援用」を阻止するため、「時効の更新」を図ります。
次の事柄がひとつでも該当すれば、時効は更新されます。
時効が更新された場合、借金の踏み倒しは不可能になります。その結果、放置した借金に多額の利息がつき、莫大な金額になる恐れがあります。
また、金融機関が裁判を起こしたことを知りながら放置すれば、財産や給料を差押えられる場合もあります。
そのようなリスクを負ってまで借金を踏み倒すことが正しいかどうか、慎重に考えたほうがいいでしょう。
少し話は変わりますが、ここからは消費者金融などからの借金を踏み倒す行為は詐欺に当たるかどうか、解説していきます。
お金を借り入れる際に本当は返す気などなかったとしたら、それは立派な詐欺です。
証拠があれば警察に逮捕されることもあり、刑事事件として裁判にかけられ、有罪判決を受けて刑務所に服役することもあるでしょう。
しかし、現実には結果としての借金の踏み倒しだけでは「返す気」の有無の証明は難しいとされています。返したくても返せなくなり、やむなく踏み倒してしまったということもあるでしょう。
こうした状況では詐欺罪にはならず、警察に逮捕されることもありません。詐欺の立証どころか、疑う根拠も弱いからです。
一方で、「他人の名前を使って消費者金融から借り入れを行った」という事例があります。
このケースでは、返す気がないから他人の名前を使ったと考えれば詐欺です。
ところが中には、「返す気はあるものの、自分の名前では審査に通らないから他人の名前を使った」というケースもあります。このケースが立証されれば詐欺になります。 返す気があっても他人の名前を使ったためです。
他人になりすましている時点で、消費者金融を騙しています。騙してお金を手に入れた以上は詐欺となります。つまり、返すと嘘をついて借りる行為も身分を偽って借りる行為も詐術を用いていることに変わりなく、そこにあるのは詐欺の犯意です。
以上のことから、踏み倒すつもりがあったなら詐欺罪で訴追される可能性があります。
ちなみに、家族や友人が勝手に自分名義で借金して踏み倒した場合は、あなた自身が詐欺罪が適用されることはありません。
もし、身に覚えのない借金の詐欺罪で訴追されてしまった場合は、民法の規定通りに無効や取り消しを主張しましょう。
ここで、ひとつ疑問が生じます。「借りた時点では返す気があったものの、返済が苦しくなって踏み倒そうとの思いに至った」という場合です。
このケースでも、基本的には借りたときに返す気があったため詐欺罪にはならないと考えられます。理由は、騙して借りた事実(貸し手からみれば、騙されて貸した事実)が存在しないためです。
このように、借金が返せなくなって踏み倒すこと自体は犯罪ではなく、逮捕されることもありません。とはいえ、民事での責任は残っています。「刑事事件にならないから大丈夫」といった考え方は危険ですので、やはり借金の踏み倒しは避けるべきでしょう。
実は、「消滅時効の援用」による踏み倒しの他にも合法的に借金の減額や免除ができる方法があります。
それが「債務整理」です。
債務整理の手続きは大まかに3つあります。
・任意整理
債権者との直接交渉で将来利息のカットや返済期間の延長により負担を減らすことができます。債務整理の中では最もリスクが小さいですが、一方で“ブラックリスト入り”の状態となりクレジットカードやローンを5年利用できない、借金の減額幅が小さい、といったデメリットもあります。
・個人再生
裁判所での手続きです。家を残しながら借金を5分の1程度まで減らせるのが大きなメリットといえます。デメリットとしては、安定した収入があることが条件になる、官報に載る、5~10年は“ブラックリスト入り”の状態となる、連帯保証人に迷惑をかける、などがあります。
・自己破産
こちらも裁判所での手続きです。財産の一部を手放すかわりに返済を免除することがでできます。ただし、持ち家を失う、官報に載る、連帯保証人に多大な迷惑をかける、5~10年は“ブラックリスト”に載るなど、デメリットも大きい債務整理です。
以上のように債務整理にはデメリットもありますが、債権者による中断などにおびえることなく借金の負担を軽減できます。
加えて、弁護士に任せればより有利な条件で交渉を成立させやすく、借金を減らせる可能性も高くなります。その点においては、はるかに踏み倒しよりデメリットが少ないといえるでしょう。
現在は情報網が発達し、名字の変更や転居によって債権者である金融機関の目をごまかすことはまず困難でしょう。また、合法的に借金を踏み倒せる「消滅時効の援用」という方法はありますが、時間がかかる上に中断される恐れもあります。
しかし、同じく合法的に借金をなくす方法として「債務整理」を検討するのもひとつの手です。こちらは時間をかけずにでき、中断されることもありません。ぜひ借金問題解決の選択肢として、債務整理を検討してみてはいかがでしょうか。
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2017.12.13 公開