任意整理で楽になった借金の返済中にまとまったお金が手に入ったら、「残金を一括で払ってしまおう」と考えるのは自然なことです。
一方、利息の付かない借金を一括返済したところで得にはならないとの考え方もあります。得にならないだけならよいものの、損をすることがあるかもしれません。
そこで、「任意整理した借金の一括返済はできるのか」と、「可能な場合のメリットとデメリット」について検討してみましょう。
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2022.02.03 更新
任意整理で楽になった借金の返済中にまとまったお金が手に入ったら、「残金を一括で払ってしまおう」と考えるのは自然なことです。
一方、利息の付かない借金を一括返済したところで得にはならないとの考え方もあります。得にならないだけならよいものの、損をすることがあるかもしれません。
そこで、「任意整理した借金の一括返済はできるのか」と、「可能な場合のメリットとデメリット」について検討してみましょう。
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目次
多重債務に陥ったことをきっかけに任意整理をした結果、金銭的に余裕が出てくることはよくあります。また、返済の途中で、想定外の収入を得る可能性もあります。
そんなときにふと「任意整理で支払い中の残債務を早期に返済してしまおう」と思うかもしれません。残りの債務を一括で支払ってしまえば、晴れて借金生活からの完全に脱却ができるので、当然のことでしょう。
しかし、そもそも任意整理で決めた分割返済の約定に従わないで、一括返済(繰り上げ返済)ができるのかとの疑問の声もあります。
結論としては、任意整理した借金の残債務を一括で返済することは可能です。
その理由は大きく2つあります。
第一に、債権者にとって任意整理における分割返済の合意は、債務者に一括返済する能力がないことを前提として仕方なく結んでいるものです。しかも、任意整理した借金には原則として利息は付かないのが通例です。
つまり、消費者金融やカード会社など債権者にとっては、任意整理後の債権は、利息がつかないので利益にならず、なおかつ、管理の手間だけがかかるものなのです。
このような事情があるため、債権者側には一括返済(繰り上げ返済)を断る動機がありません。
第二に、分割返済の際には各債務ごとに期限が設定されますが、借金の返済における期限とは、その期限が来るまで債務者にとって返さなくてもよい期間であることを意味しています。
つまり、期限までは「返さなくてもよいが、返してもよい」というのが民法の考え方です。
この「返さなくてもよい」状態を「期限の利益」があるといい、それにもかかわらず返す場合「期限の利益の放棄」がされたと表現します。
具体的な条文は以下の通りです。
※民法第136条:期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
第2項:期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
関連して、「利息の付いた借金を早く返したら、その利息の分だけ債権者の利益が減るのではないか」と考える人もいるでしょう。上記民法の第2項のただし書きが気になるところです。
債権者が予定どおり期限までの利息を得られないことが「相手方の利益を害する」ことになるかについては、「なる」という説もあれば「ならない」という説もあります。
ただ、実務においては利息の付く借金であっても、特別な取り決めがない場合は、返済時期までの利息を加算すれば早期返済が可能です。
任意整理に至らない通常の金銭消費貸借における返済においても、期限前に返済している人もいます。また、消費者金融のATMが期限前の返済入金を受け付けないということはないでしょう。
仮に早く返済すると利息が減るからダメだと言うのなら、それは違法な業者かもしれません。
いずれにしても、一般に任意整理をした無利息の借金を早期に一括返済できない理由はありません。
さて、任意整理をした借金を一括返済することによって、どのようなメリットがあるかを検討します。
最大のメリットは、借金からの解放です。
任意整理をした借金を一括返済してしまえば、毎月の返済日を気にする必要もなくなります。
ただし、ほかにも借金がある場合は、限定的なメリットとなります。
次に考えられるメリットは、返済額を減額してもらえる可能性があることです。これについては後述します。
任意整理をした借金を一括返済することにメリットがあるように、デメリットも存在します。
それは、ごく単純なことですが手持ちのお金が減ることです。
一括返済の直接的なデメリットではないものの、手持ちのお金が減ってしまうと思わぬ落とし穴にはまってしまうリスクが生じます。
具体的には、以下のような事態が生じたときが危険です。
一括返済したときは、高給の仕事でバリバリ稼いでいたとしても、不景気による減給やボーナスの減額なども考えられます。
さらに、病気やトラブルの多くは予告なくやってきます。一括返済したことで手持ち資金に余裕がなくなっていると、困難な事態に陥ってしまうこともあるかもしれません。
また、一括返済した借金以外にも借金がある場合は、そちらの返済にも影響が出てきます。
このとき、任意整理の借金を一括返済してからの期間が5年以上であれば、新たにカードローンなどの借金をして急場をしのぐことが可能かもしれません。
しかし、一括返済して間がなければ、俗に言うブラックリストに載っている状態です。
申込時に信用情報の登録を照会されるため、正規の貸金業者から借入をすることはまず無理です。
この段階で、別の解決方法があればよいものの、ないからといって非正規の貸金業者(闇金)から借りてはいけません。
闇金に手を出してしまうと、法律の枠内での話が難しくなってしまうため、債務整理をしたときよりも状況が悪くなる可能性があります。
任意整理した借金を一括返済するメリットのところで述べたように、残債務を減額できる可能性はあります。
うまくすれば、残元本の7割〜8割程度にまで減らすことも不可能ではありません。
ただし、それならと急いで一括返済の話をするのは要注意です。まず、デメリットを十分に考慮したうえで、一括返済するかしないかを判断する必要があります。そして、デメリットの不安がなければ、一括返済へ向けた動きを始めることになります。
債権者である貸金業者へ一括返済の話をするにあたり、任意整理の手続きに弁護士や司法書士を代理人として使ったかどうかも重要な事柄となります。
代理人が手続きを行った場合は、代理人を経由して返済している場合があるからです。この場合は、代理人に事前に相談しておくべきでしょう。
また、代理人には和解をお願いしており、返済は自分が直接行っているような場合でも交渉ごとは代理人を通じて行うほうが得策です。
任意整理に代理人を使ったか使っていないかにかかわらず、債務者本人が一括返済による減額を求めても債権者が応じる可能性は低いと思っておくべきです。
そもそも、任意整理の時点で利息制限法による引き直し計算をしており、残元本に違法性はなくなっています。つまり、「引きしろ」がない状態です。
さらに、任意整理によって確定された全額の返済を受けるのが予定されているという前提があります。
ちなみに、任意整理の和解交渉で減額が行われるのは、債務者の任意の返済が可能なように、和解条件を詰めている段階だからだといえます。その時点で、債務者が分割でなら全額返済できる条件を導き出したわけなので、債権者の立場として、さらなる減額に応じる必然性はありません。
実際に減額されるケースで考えられる主な理由は、債権者側が回収を急いでいることです。
債権者の資金繰りが苦しくなっている、当該債権の回収可能性に疑いを持っているなどの場合、債権者にとって、減額してても早く返済を受けたいという事態は考えられます。
しかし、どこにでもある話とは言えないでしょう。それ以外の理由で減額されることがないとは言えないものの、それこそ弁護士や司法書士などの専門家でもない本人にはハードルが高い話です。
また、「この債務者は全額を一括返済できるし、そのつもりだろう」と悟られるような交渉の仕方では、成果は得られません。
弁護士や司法書士などの代理人が交渉したとしても、減額できる可能性が劇的に高くなるわけではありません。しかし、本人が交渉するよりは期待できるでしょう。
初めから減額に大きな期待をするのではなく、「減額できれば儲けもの」という気持ちでいたほうが無難だと言えます。自分のケースでどうなるかの予測などは、弁護士・司法書士に相談をしてみることです。
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2017.12.10 公開