積み重なった借金の返済が難しい場合に検討したいのが、債務整理という選択。
とはいうものの「家族への影響が気になって手続きに踏み切れない」という方もいるのではないでしょうか?
債務整理自体は、債務(借金)を負っている本人以外に直接的な影響はありません。
家族に知られずに債務整理を行うことも可能です。
しかし方法によっては「まったく影響がない」とはいい切れないため、どんな影響があるのかを把握した上で判断しましょう。
こちらの記事では、債務整理によって考えられる家族への影響と、そうした影響をできるだけ及ぼさないようにする対処方法について解説します。
どの債務整理を選ぶかで家族への影響は異なる
債務整理と聞くと「財産を失う」「子どもの進学・就職・結婚に影響する」「家族の信用に傷がつく」いったネガティブなイメージがあるかもしれません。
しかし、債務整理は本人に帰属する問題のため、原則として家族への直接的な影響があるわけではないのです。
ただし、選択する債務整理の種類やあなたが置かれている状況によっては、少なからず家族にも影響することもあるため、注意はすべきでしょう。
債務整理が家族に与える影響は「どの債務整理方法を選択するか」によって、少しずつ異なります。
債務整理には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があります。
一般的に、債務の減額幅が小さいほど家族への影響は少なく、同様に家族に知られる可能性も低くなります。以下で詳しく解説いたします。
任意整理が家族に与える影響
任意整理とは、債権者(お金を貸している人)と交渉して借金の将来利息部分を減額・免除してもらい、元本を返済しやすくする債務整理の一種です。
任意整理のデメリットは「信用情報に傷がつくこと」のみで、それ以外に家族への影響はありません。また、手続きも代理人となる弁護士・司法書士と債権者の間で行われるため、任意整理の事実を家族に知られる可能性も低いといえます。
ただし、任意整理を行うと債務者本人の信用情報にその事実が記載されてしまい、いわゆる「ブラックリストに載った状態」になります。その結果、直接的ではないものの、間接的には家族にも影響がおよぶ場合もあります。具体的には次のような影響です。
任意整理が家族に与える影響
- 任意整理をした本人名義でローンが組めない
- 家族カードが使えなくなる(本人が名義人の場合のみ)
- 子供が組む奨学金の保証人になれなくなる
- 家族が保証人になっている場合は代わりに請求される
では、それぞれの影響や対処法について詳しく見ていきましょう。
自分名義でローンが組めない
任意整理を行った場合、信用情報機関にその事実が登録されます。いわゆる「ブラックリスト入り」です。
信用情報機関によっては、任意整理の記録が消えるまで完済後5年ほどかかります。この記録が消えるまでの間は、自分名義でローンを組むことができません。
ブラックリストに載ること自体はあくまで本人のみの問題ですが、家族で共有する車や家などを購入する場合には、ローンを組みたくても自分の名義は使えなくなります。
ただし、任意整理を行ったからといって「今後永久的に家や車をローンで持てなくなる」というわけではありません。配偶者や親族など、別の名義を使用することは可能です。
最低5年間待って信用情報に問題がないか確認した後に、ローンでの購入を検討するという方法も取れます。
家族カードが使えなくなる
任意整理を行った本人はクレジットカードが利用できなくなります。
一方で本人以外の家族それぞれが、自分名義でクレジットカードを契約している場合、利用できなくなるなどの影響は一切ありません。
しかし「家族カード」を発行している場合には注意が必要です。
債務者を主契約者とする家族カードを、配偶者や子どもが所有している場合、配偶者や子供のカードも使えなくなります。
逆に、主契約ではない債務者が家族カードを利用していた場合、任意整理を行った時点では他の債務整理方法と異なり引き続きカードを利用できます。しかし更新時に任意整理を行った本人だけが利用停止となる可能性はあります。
以上のような影響があるため、家族それぞれが自分自身でクレジットカードを契約しておけば影響は最小限にとどまります。また、債務者が家族カードを利用していた場合には、ブラックリストが影響しないデビットカードの家族カードを検討してもよいでしょう。
子どもの奨学金の保証人になれなくなる
あなたが任意整理を行った場合でも、家族である子どもが奨学金制度を使えなくなるわけではありません。奨学金は進学する子ども本人が利用するものであり、返済義務は子どもにあるからです。
しかし、奨学金を申し込む場合には連帯保証人が必要となる点が問題となります。保証人になるにあたっては信用調査が行われ、債務者本人は任意整理後最低5年間、奨学金の保証人になれないからです。
進学を控えた子どもに奨学金を受けさせたい場合には、信用情報に問題のない親族や配偶者を連帯保証人とするか、保証料を払って機関保証を利用しなくてはなりません。
ただし、任意整理後5年以上経ち、信用情報が回復した後であれば、奨学金の保証人になることはできます。
家族が保証人になっている場合は要注意
任意整理は本人の問題であり家族とは無関係ですが、家族が債務の保証人になっている場合は例外です。任意整理を行うと、保証人へ債務の返済義務が発生するからです。ただし、任意整理では整理の対象とする債務を選択することができます。
保証人付きの債務を任意整理の対象から外すことも可能です。そうすれば、家族が保証人になっている状況でも影響がありません。家族が保証人になっている債務の額が少ない場合は有効な手段と言えるでしょう。
ちなみに、「自己破産」や「個人再生」の場合には、債務整理にともない保証人となっている家族に請求が行くため家族への迷惑は避けられません。そのため、債務整理について正直に話した上で、家族とともに債務整理をするなど、対処法を弁護士に相談することを検討してください。
個人再生が家族に与える影響
「個人再生」の場合、任意整理よりもさらに家族及ぶ影響が大きくなる可能性があります。
たとえば車や貴金属といった「家以外のローンが残っているもの」があれば引き上げられてしまうため、家族に知られてしまう可能性や家族に及ぼす影響は任意整理よりも大きくなります。
なぜならローンで物品を購入していると、完済まではローン会社に所有権があるので、個人再生を行うと債権の一部として回収されてしまうからです。
家族共有のものをローンで購入していた場合、そこで個人再生の事実を家族に知られるということもあるでしょう。
生活に必要な車などを回収された場合、家族には大きな迷惑がかかります。なお、ローンを完済している物品については債権回収の対象になりません。
また、個人再生が行われるとその事実が官報に掲載されます。家族以外にも債務整理の事実を知られてしまうおそれがあることを考慮しておかなければなりません。
個人再生は任意整理とは異なり、元金を圧縮することができますが、整理する対象を選ぶことはできません。
そのため、債務の中に家族が保証人となっているものがあれば、個人再生を行った時点で家族が返済を迫られることになります。そうなれば、家族も債務整理を行うことになる可能性がある点は覚えておきましょう。
自己破産が家族に与える影響
自己破産では、任意整理・個人再生で発生する影響に加えて、持ち家がある場合は持ち家も手放さなければなりません。
自己破産は債務が帳消しになる代わりに、生活に必要なものを除き一定の価値のある財産を手放す必要があります。
ほとんどの場合で、自宅を含む不動産の保有は認められません。持ち家に住んでいる場合も、売却して債権者への返済にあてられてしまうのです。
自己破産は最も効果の高い債務整理方法ですが、デメリットも多く、リスクも大きくなるため、選択する際は慎重に検討を重ねることが必要です。
なお、債務整理であっても任意整理や個人再生を選択すれば持ち家は残せる可能性があるので、あわせて検討してみましょう。
自己破産の場合も、任意整理とは異なり整理する債務を選ぶことはできず、すべての債務を一括して整理することになります。債務の中に家族が保証人になっている債務があれば、家族に返済義務が生じるので注意が必要です。
家族への影響を最小限に抑えながら借金問題を解決するには?
これまでご説明してきたように、債務整理の中で家族に影響が少ない方法は任意整理です。
支払いを滞納すると、督促で家族に借金をしている事実が知られる可能性があります。ブラックリストに載り、借り入れが必要な際に審査に通らなくなってしまう場合もあります。
借金問題は債務整理で解決できる可能性があるので、弁護士や司法書士に相談することを検討しましょう。