「多重債務ってどんな状態?」
「多重債務になったらどうやって解決すればいい?」
多重債務とは、キャッシングやカードローン、消費者金融などで「2社以上から借金している状態」を指します。
多重債務状態でありながらその自覚がない方も少なくないようですが、複数の貸金業者から借り入れをしている人は、全国に367万人に上ります(日本信用情報機構、2020年3月)。
しかし、多重債務状態を放っておけば借金が増え、いつの間にか返済不能なレベルに至ってしまう恐れもあります。
この記事では、多重債務の概要や多重債務に陥る原因、多重債務を回避する方法について詳しく解説します。多重債務者を法的に救済する債務整理についてもご説明しますので、最後までお読みください。
あなたは大丈夫?多重債務とは
多重債務とは、キャッシングやカードローン、消費者金融などで「2社以上から借金している状態」を指します。
それが5社を超えて返済が難しい場合は危険といえます。
では複数の貸金業者から借り入れを行うのはなぜ危険なのでしょうか?
まずは、多重債務状態で生じるリスクについて見ていきましょう。
元金が減らないと借金が増える
多重債務状態になると、毎月の利息に注意が必要です。
たとえば3社からそれぞれ50万円(A社)、30万円(B社)、20万円(C社)借り入れがある状態で、金利が18%あれば、1ヶ月の返済にかかる利息は、
- ・A社:約7,397円
- ・B社:約4,438円
- ・C社:約2,958円
- 合計14,793円になります。
月々合計3万円支払ったとしても、約半分が利息の返済に充てられる計算になります。
その結果、「元金がなかなか減らない状態」となり、返済が長期化する恐れがあります。
毎月何度も返済日がある
金融機関により返済日は違うので、月に何度も返済日が来ることになります。
「日々借金返済のことばかり考えている」という状態にもなりかねません。
借金額を把握できなくなる
多重債務状態だと、貸金業者ごとに金利や返済額が異なるなど、借金額の管理が難しくなる場合もあります。
それが原因で滞納が生じ、借金が大きく増える恐れがあります。
電話・書面での督促がストレスになる
返済を滞った場合は、電話や書面で督促されます。
複数社から借金しているということは、督促も複数社からそれぞれ来ることになります。
何度も多重債務状態で返済が滞った場合、督促の頻度も高くなりストレスに感じることもあるでしょう。
返済の不安を抱えたり、月に何度も返済をしていることで、家族など身近な人に知られる危険性も高くなります。
生活が苦しくなる
多重債務状態だと収入に対して返済額の割合が大きくなるため、相対的に「自由に使えるお金」が減ってしまいます。
家賃や光熱費、食費に使えるお金がなくなってしまうと、生活が成り立たなくなる恐れがあります。
最終的に財産を差押えられてしまう可能性も
借金を滞納したまま放置すると、債権者(お金を貸した側)に裁判を起こされて給与などの財産を差押えられてしまう恐れもあります。そうなる前に多重債務状態であることを自覚し、一刻も早くその状態から脱することが必要です。
多重債務に陥るメカニズム
続いては、多重債務に陥るメカニズムについて解説していきます。
多重債務となる原因の多くは「生活費の補填」
多重債務者にはギャンブルや浪費に無縁な方もいるようです。
2018年6月に国が発表した「多重債務者対策を巡る現状及び施策の動向」があります。それによれば、消費者金融などで借金をした人の半数近い45%が、借金の理由に「生活費不足の補填」を挙げています。
つまり、なんらかの理由で家計が苦しくなり、足りない生活費を補うために借金を重ねた結果、多重債務状態になる人が多いのです。
「消費者被害」も危険!多重債務の入口に
多重債務に陥る背景にほかに、以下で挙げる「消費者被害」もまた多重債務の入口となり得ます。このような被害に遭ってお金を失い、生活費の不足から多重債務に陥るケースもあるので注意しましょう。
【架空請求詐欺の被害】
身に覚えがない請求に応じ、多額のお金をだまし取られるなどの被害があります。
【詐欺ショッピングサイトの被害】
偽ショッピングサイトで買い物をした結果、お金を払っても商品が来ないなどのトラブルに巻き込まれることがあります。
【フィッシング被害】
実在する会社をかたる電子メールから偽のサイトに誘導する手口です。うっかり入力した個人情報を使って、クレジットカードなどを不正利用されるケースが報告されています。
【クレジットカードのショッピング枠現金化による被害】
お金がない人に法外な金額で買い物をさせ、購入価格の何割かを差し引いた上でキャッシュバックする手口です。後で高額な代金を全額払うことになるだけでなく、キャッシュバック時に差し引かれた分は損してしまいます。
貸金業者との付き合い方を誤ると危険!
多重債務状態で借金の返済が困難になると、通常の貸金業者からは新たな借金を断られる場合もあります。
だからといって、違法な貸金業者であるいわゆる「ヤミ金」から借りてしまうことは危険です。
違法な金利をとるヤミ金から借りることは借金の解決にはなりません。
くれぐれも手を出さないように注意しましょう。
安易に借金を重ねると多重債務に陥る場合も…
多重債務に陥りやすい傾向のひとつに、「複数のクレジットカードを所有している」という特徴があります。
クレジットカードのリボ払いやキャッシングサービスは比較的利用しやすいこともあり、「借金をしている」という感覚がないまま利用している方も多いようです。
リボ払いやキャッシングは金利(手数料)がかかることからも、消費者金融から借金するのとあまり変わらないともいえます。しかし、安易に借金を重ねてしまい、多重債務で返済に困るケースもあるのです。
このように、生活費の補填などを目的に少額の借金を重ねた結果、気がつくと返済不能となるのが多重債務の怖いところです。
今知っておきたい、多重債務を解決する方法
多重債務を解決する方法にはどのような方法があるのでしょうか。
おまとめローンは借金の解決になるのか?
おまとめローンとは、複数の借り入れ先をひとつにまとめて借金を一本化する方法です。通常は、銀行のおまとめローンを利用します。
メリットとしては、借り入れ先を1本に絞るので、返済額や返済日の管理がしやすくなります。
しかし、おまとめローンにはデメリットもあるので注意が必要です。
デメリット
・返済額が増える可能性がある
借入残高や返済状況をチェックされるので、返済滞納などがあれば、審査に通らない場合もあります。
・審査に通るとは限らない
借入残高や返済状況をチェックされるので、返済滞納などがあれば、審査に通らない場合もあります。
・過払い金の返還機会を失う場合も
元の借金に過払い金が発生していた場合に「おまとめローン」へ借り換えると、過払い金の返還機会を失ってしまう可能性があります。
これらのデメリットを考えると、おまとめローンは根本的な解決に至らない可能性があります。
おまとめローンで借金を一本化するデメリットについては、
「借金一本化のデメリット3つ」で詳しく解説しています。
債務整理
債務整理とは、借金を減額・免除したり、支払いに猶予を持たせることで、多重債務者を救済できる可能性のある方法を指します。ケースによっては、払い過ぎた利息を取り戻す「過払い金返還請求」も可能です。
債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類あり、それぞれに簡単にご説明します。
任意整理
任意整理では、債権者との話し合いの中で借金の金額を見直し、将来利息をカットして借金残高を減らせる可能性があります。
それにより無理のない返済が可能となるのが大きなメリットですが、一方で借金の減額幅が少ない、最低5年程度はクレジットカードやローンが利用できない(ブラックリスト入り)といったデメリットもあります。
裁判所が関与しない手続きのため周囲に借金の事実がバレにくい、財産の差押えなどを受けずに済むことなどから、債務整理の中では最もリスクが小さい方法です。
個人再生
最長5年で、裁判所を通じて借金を1/5~1/10程度まで減額できる可能性のある手続きです。返済幅が大きいので、「任意整理をしても返済が苦しい」という方にとってメリットのある方法と言えます。
自己破産と違って条件を満たせば家や車を残せること、ギャンブルや浪費による借金も整理可能なこと、特定の資格職業が制限されないことが利点ですが、安定収入が適用の条件。連帯保証人が債務を負う場合がある点にも注意が必要です。任意整理と同じく、「ブラックリスト入り」も覚悟しなければなりません。
自己破産
裁判所に支払い不能を申立てる手続きです。安定した収入がなくても手続きはでき、裁判所が許可すれば借金をゼロにできる可能性もあります。
一方、自己破産には一定以上の財産を手離して「ブラックリスト入り」の状態となる(ただし自己破産後の収入は自由に使える)ことや、弁護士などの特定の資格職業に一定期間就くことが制限される、連帯保証人に迷惑をかけるなどのデメリットも多くあります。
以上の債務整理は、合法的に借金を減額・免除できる可能性のある方法です。多重債務を根本的に解決する手段として検討しましょう。
多重債務の回避に弁護士・司法書士への相談が有効
多重債務の債務整理については、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。以下でその理由をご説明します。
債務整理は自分でやると負担が大きい
債務整理は自分でもできますが、素人には難しい手続きが数多くあります。任意整理では貸金業者と直接交渉する必要もあります。
その点、弁護士は豊富な法律知識をもとに手続きや交渉をしてくれるでしょう。
現実的な返済計画を立てられる
任意整理や個人再生を行った場合は、債務整理後も返済を続ける必要があります。
債務整理後の返済計画についても、弁護士・司法書士からアドバイスを得られることでしょう。
事務所によっては無料相談に応じてくれる場合も
弁護士・司法書士事務所には、個別で無料相談に応じているところもあります。そのような事務所では、債務整理した場合の費用についても無料で相談できます。
弁護士費用の内訳を丁寧に説明してくれたり、分割での支払いに対応してくれたりする事務所なら、安心して相談できるでしょう。費用に不安がある方も、思い切って一度相談してみてはいかがでしょうか。
無料で債務整理について相談できる機関もある
いきなり弁護士事務所に行くことに抵抗がある方は、無料で弁護士に相談できる機関に問い合わせてみましょう。
なお、弁護士による対応ではありませんが、以下の機関でも債務整理の相談ができます。
まとめ
「まずは相談」が、脱・多重債務の第一歩
多重債務とは、2社以上から借金して、返済に困っている状態のことです。このまま放置すれば、借金によって困窮する恐れもあります。その状態からいち早く脱するためにも、まずは弁護士に相談してみましょう。その上で、債務整理も検討してみてはいかがでしょうか。
債務整理は多重債務者を救済できる可能性のある措置ですが、状況により選ぶべき方法は変わってきます。弁護士・司法書士事務所ではその点についても相談し、ベストな方法を考えてもらいましょう。「まずは相談」が、多重債務から解放される第一歩になるかもしれません。