時効の援用のデメリットは債務整理で避けられる?
2021.08.29 更新
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目次
時効を援用すれば、借金を返済する必要がなくなるのでいいのでは?
借金を滞納し始めたけれど、このままずっと返済しなかったら時効になって払わなくてよいのでは?と考えている人もいると思います。
「時効期間が経過し、時効を援用すれば債務は消滅するので、返済をする必要はなくなる」
これは理論的にはそのとおりです。
しかし、うまくいきづらいでしょう。また、時効の援用によるデメリットもあります。
以下では、なぜ時効の援用が難しいのか?について説明していきます。
時効の援用をするための条件(内容証明郵便による通知)
一定の期間の経過により権利を消滅させる制度を「消滅時効」と言います。
「権利の上に眠る者は保護に値しない」という理由から、一定期間、権利者が権利を行使しなかった場合には、その権利を消滅させるというものです。
借金は、貸主から見れば貸金債権であり、権利の一種なので、消滅時効の適用があります。
2020年4月1日に施行される改正民法では、商事債権(商取引によって生じた債権)の時効期間を5年としている規定や職業別短期消滅時効期間を定める規定が削除されます。
これにより、すべての消滅時効期間は原則として「主観的起算点から5年間」または「客観的起算点から10年間」に統一されます。
とはいえ、時効期間が経過しただけで当然のように時効の効果が発生するわけではありません。
時効の効果を発生させるには、時効の完成によって利益を受ける者が、時効の利益を受けることの意思表示をする必要があります。
これを「時効の援用」といいます。
時効の援用は意思表示なので、相手方に到達しなければなりません。
口頭や普通郵便では、時効の援用をしたかどうかの確実な記録を残すことができません。
そこで、援用をしたかしないかの争いが生じるのを防ぐため、通常は「内容証明郵便」を利用して、時効の援用をします。
内容証明郵便は、同じ内容の文書を3通作成し、1通を差出人の手元に、1通を郵便局に保管し、残る1通を相手方に送付するというものであり、時効の援用をしたことが、第三者である郵便局に記録として残ります。
そのため、相手方が後日、そのような文書を受け取っていない(時効の援用はなかった)という言い訳をすることができなくなるのです。
また時効の援用手続きは弁護士に依頼する事も可能です。1人で手続きするのが不安な方は依頼しましょう。
以上が消滅時効についての基本的な説明ですが、時効には「更新」という制度があることに注意が必要です。
法律で定められた更新事由があると、それまで進行してきた時効期間がゼロになってしまいます。
そのため、そこからさらに時効期間が経過する必要があります。
時効完成は難しい(時効の更新)
時効には更新という制度があると説明しました。貸金業者は債務者から返済を受けることで利益を得るわけなので、時効の完成をただ放置するわけではありません。
貸金業者は時効を更新させて、借金を回収しようとします。
法律で定められた時効の更新事由は、次の3つです。
時効の更新事由
- 請求
- 差押え、仮差押え又は仮処分
- 承認
これらの事情があれば、それまで進行した時効期間がゼロになってしまうのです。
①請求の典型例は、裁判上の請求(支払督促申立や訴訟提起など)です。
②の例としては、住宅ローンの滞納があった場合に、住宅を差押さえて競売にかけると、住宅ローンの消滅時効が更新するという事案が考えられます。
③は債務者が債務を負うことを認めることで、一部の返済や、返済の猶予の申し入れなど、債務を負っていることを前提とする行為も含まれます。
時効の更新により消滅時効の完成が妨げられた場合、元本だけでなく、それまでに生じた遅延損害金なども消滅せずにそのまま残るということになります。
極端に言えば、時効完成直前に訴訟を起こされた場合、元本だけでなく5年分に近い遅延損害金等を支払わなければならなくなるということです。
時効を援用することでデメリットもある
また、仮に更新事由がなく、時効の援用をすることができたとしても、デメリットがないわけではありません。
例えば、長期にわたって借り入れをしてきたが、返済ができなくなり、放置していた債務について時効を援用したとします。
一見すると、債務を消滅させて支払いを免れることができたように見えるものの、このような場合には、実際には過払いになっており、過払い金の返還請求ができる場合も少なくありません。
にもかかわらず時効の援用をしてしまうと、過払い金を回収することができなくなってしまいます。
また、借金を滞納すると、信用情報機関に事故情報が登録されることがあるのですが、金融機関によっては、消滅時効の情報を信用情報機関に登録しないところもあります。
その結果、事故情報が残ったままになるため、5~10年ほどはローンの審査が通らなくなります。
さらに、金融機関は債務者の住民票を取得することができるので、転居して住民票を移転させても、転居先に請求書を送ったり、訴訟を起こしたりすることで時効を更新させることが可能です。
時効の完成を待つことが期待できない、あるいは時効を援用できたとしてもデメリットがあると言うなら、どうすればいいんですか?か。
結論としては、時効の完成を待つのではなく借金を返済する方法を考えるか、弁護士や司法書士に相談して債務整理をするなどの解決方法をとるのがよいといえます。
債務整理をすると、借金を減らせる可能性がある
債務整理は、借金を整理し、借金の負担を軽くする方法の総称です。
債務整理には、債権者と裁判所を介さずに個別に交渉する任意整理、裁判所の手続きである個人再生、自己破産などがあります。
任意整理では、将来利息をカットすることで月々の返済額を減らしたり、返済期間を短くしたりできる可能性があります。
また、個人再生では借金を10分の1〜5分の1に減額できることもあり、自己破産ではすべての借金の支払いが免除されます。
時効の援用ができれば支払いを免れることは可能ではあるものの、簡単には時効が完成しないことや、更新事由があると支払いをしていなかった期間の遅延損害金も支払わなければならなくなるといったリスクがあります。
このようなリスクを冒すよりは、債務整理を検討するのも一つの方法です。
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2017.12.13 公開