自己破産の条件って?免責許可までのハードルはたった2つ
2021.12.28 更新
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この記事のポイント
- 自己破産するための条件は、借金を支払えない状態にあること、免責不許可事由に該当しないことの2つ。
- 9割以上の確率で免責を得ることができる
目次
借金をゼロにするために必要な条件とは
自己破産手続きを申請しても誰でもできるわけではない
「借金の返済が苦しいから自己破産をしたい」と思っても、誰でも認められるわけではありません。
自己破産によって借金の支払い義務が免除されるための条件とは、以下の2つです。
- 借金が支払えない状態であること(支払不能状態)
- 借金をした理由や経緯が正当であるかどうか(免責不許可事由)
この2つの条件を認めてもらうために、自己破産では「破産手続」と「免責許可手続」という2つの手続きをクリアする必要があります。
それぞれの手続きでチェックするのは以下のとおりです。
破産手続 | 申立人の財産額を調査し借金が支払えない状態であるかをチェックする |
---|---|
免責手続 | 借金をした理由や経緯を調査し、借金の支払い義務を免除するべきかどうかをチェックする |
借金が支払えない状態が認められ「破産手続開始の決定」がなされると、破産者となりますが、この時点では借金から逃れることができません。借金をゼロにするためには最終的に「免責許可の決定」を得る必要があるのです。
ハードルが高いように思えますが、実際は申立てした人の9割以上が無事に免責許可決定を得ています。
自己破産が認められる条件①支払不能状態とは
借金をこれ以上返済できないと裁判所に認めてもらうこと
裁判所が「この人は借金を抱えすぎていて返済できない」と判断した状態のことを支払不能状態といいます。
支払不能かどうかを判断するために裁判所は、以下のようなことをチェックします。
- 借金の総額と内容
- 資産額と内容
- 収入
- 年齢や家族構成
- 生活費 など
現在、借主に財産がなくてもこれから働いて借金を返せるだけのお金を稼ぐことができるならば支払不能とはいえません。
また現在収入が少なくても、借金返済をするために十分な財産(家、不動産、車、貴金属など)がある場合も支払い不能とは認められないでしょう。
支払不能かどうかは、借金額の大小ではなく、借金額と本人の支払い能力のバランスによって判断されます。
ですので、「生活保護を受給している」や「シングルマザー」のように生活が苦しい人は100万円以下の借金でも支払不能と認められることがあります。
支払不能状態の目安としては、借金を「3年程度で返済できない状態」と考えておけばいいでしょう。
自己破産が認められる条件②免責不許可事由とは?
免責を許可するのにふさわしい人かどうか
「支払不能」と認められ、破産手続決定がなされると、続いて免責手続となりますが、「免責不許可事由」に該当すると免責を得られません。
「免責不許可事由」とは、免責が認められない原因となってしまう事情のことです。免責が認められなければ「自己破産をしたけど、借金はなくならない」という最悪の状況に陥ります。
免責不許可事由に該当する行為は、破産法によると以下の通りとなります。(参照:破産法252条第1項)
- 財産の隠匿行為(財産隠し)
- 返済に回せる財産を意図して減少させる行為(詐欺行為)
- 特定の債権者にだけ返済する行為(偏頗弁済)
- ギャンブルやショッピング、株式投資やFXなどに多額の資金を費やす行為(浪費行為)
- 返済する気がないのに(自己破産が前提で)新たな借り入れをする行為
- 裁判所に対して虚偽の事実を報告する行為
- 前回の免責許可決定から7年以内に免責許可を申立てる行為
しかし、ギャンブルやショッピングが借金の理由であっても、必ずしもも免責許可が得られないということはありません。
ギャンブルなどの浪費による借金でも「裁量免責」で認められることがある。
自己破産手続では、免責不許可事由に該当する場合であっても免責許可を出す「裁量免責」という制度を設けています。
裁量免責とは、自己破産手続を担当した裁判官が、自身の裁量にて(裁判官自身の考えで)免責決定を出すこと。
具体的には、
- 借金を返せなくなってしまったことへの反省の気持ちを示す
- 生活を経済的に立て直すことへの意欲を示す
- リストが入ります
ことで免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所独自の判断で免責を許可するというものです。
実際に、自己破産の全ての申し立てのうち9割以上で免責許可を得られています。
そもそも自己破産という手続きは、多重債務者救済のため制度化されたものです。
ですので「借金問題に困っている」「返済することが難しい」といった状況の人であれば、それほどハードルの高い手続きにはなっていません。
裁判官との免責審尋(裁判所に出頭し事情聴取を受けること)に誠実な態度で臨めば、ギャンブル等の理由でも免責許可される可能性が十分にあります。
免責不許可事由の盲点!「偏頗弁済(へんぱべんさい)」とは?
「これから自己破産をするけど、友人から借り入れたお金だけは返済したい」
このようにたとえ善意の理由であっても、自己破産直前に特定の人だけに返済することはやめてください。
ある特定の人だけに借金を返済することを偏頗弁済(へんぱべんさい)といい、免責不許可事由にあたります。
ただし免責決定後の返済は偏頗弁済になりません。返済したい人がいる場合は、免責決定後に返済するのも1つの方法です。
確実に免責許可を得るためには法律のプロに相談を
裁量免責を受けるためには誠意をもって手続きに臨む必要があります。同時に申立ての書類などに不備があると免責不許可事由とみなされることがあります。
そのためにも、法律のプロである弁護士に手続きを依頼することがおすすめです。
依頼を受けた弁護士は、複雑な書類の作成を不備なく行います。また、審尋の前に答えるべき内容やコツをアドバイスしてくれます。
借金の理由がギャンブルなど、免責不許可事由に該当する可能性があっても、それがやむを得ない事情であることを裁判所に伝えるのも弁護士の務めです。
法的な難しい手続きに正しく対処するためにも、専門家である弁護士の手助けを受けることはが得策です。
【要注意!】自己破産で免責許可されても支払義務が残るものも
免責の対象外となる「非免責債権」とは
上記の通り、基本的に自己破産では免責を得ることはできるのですが、全ての債務の支払い義務がなくなるわけではありません。
免責の対象にならないものを「非免責債権」と呼びます。
非免責債権は、例えば以下のようなものがあります。(参照:破産法253条)
- 税金や年金、社会保険料など公的なもの
- 破産者が悪意で加えた、不法行為に基づく損害賠償請求権
- 破産者が故意または重大な過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 婚姻費用分担分や子どもの養育費、または直系血族や兄弟姉妹の扶養義務にかかる請求権
- 従業員への給料や預り金
- 破産者が知っていながら債権者名簿に記載していない請求権(※債権者が破産手続きの開始決定を知っていた場合は除く)
- 罰金など
税金などの公的なものや、養育費など親族間での扶養義務にあたるもの、故意の過失によるものなどは免責の対象にならないと考えておけばいいでしょう。
【Q&A】こんな条件でも自己破産の免責は得られる?
最後に免責が許可されるかを、具体的な条件別に紹介します。
- 生活保護でも申立ては可能?
「生活保護を受給していると自己破産できない」、「自己破産する以上は生活保護を受けなければならない」なんて心配は一切必要ありません。
しかし生活保護で受給したお金を返済にあてると、不正受給と認定されて支給がストップされるばかりか、遡っての返還を求められる可能性も十分にあるため注意しましょう。
- 奨学金が払えなくて自己破産を考えているのですが…
自分の奨学金が払えなくて自己破産することは可能です。
しかし、自己破産した親の子供が奨学金をもらう際は気をつけなければいけません。この場合、奨学金の審査が許可されないことがあるためです。
対処法としては別の親族に連帯保証人になってもらうか、若干の手数料はかかってしまいますが、学生支援機構側に保証会社を用意してもらうことで対処可能です。
- ケガやうつ病で働けなくなり、自己破産せざるを得ない
病気や怪我で、長期入院したり、寝たきり、またはうつ病になったりして、働いて収入を得ることができないという場合は、自己破産の免責を得ることが可能です。
この場合、生活費のための借金でも医療費を支払うための借金であっても、その理由が免責不許可事由になることはありません。
- 恋人にお金を使ってしまった
浪費による借金は免責不許可事由にあたるとされています。しかし裁判所もどの程度を「浪費」とするかは判断が難し炒め、多くの場合、免責不許可事由には該当しません。
とはいえ、たとえばキャバクラなどに毎晩行き、高いボトルを入れて借金を背負ったという場合には浪費と判断される可能性があります。
借金の理由が「免責不許可事由かも?」と不安な方は、弁護士に相談しましょう。
- 公共料金を滞納している場合は非免責債権になる?
電気、ガスは非免責債権ではありませんので、免責と同時に滞納分の支払義務はなくなります。ただし水道料金の一部である下水道料金だけは、地方自治体が管轄しているため、非免責債権となります。
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2017.12.03 公開